プラスチック成形加工学

「モノづくり工学」への道は、物理現象としての加工現象をいかにしてありのままにかつ正確に把握できるかを出発点としている。しかしながら、この"加工現象を知ること"すら困難な重要なモノづくり分野が、今なお多く残されている。その代表的な分野がプラスチック成形加工である。

東京大学生産技術研究所の横井研究室では、CAEが広く導入されながら依然として経験と勘に支配されるこのプラスチック成形加工分野において、成形現象の実験解析を起点とした工学の新たな体系化を目指すべく研究に取り組んできた。そこでの課題は、既存の計測技術の枠組みを越えた新規可視化・計測手法の開発(Development)と、それに基づく加工現象の系統的実験解析(Research)、すなわち、D&Rであった。

今日まで、次々項の「研究テーマ」に示される新規開発の多様な可視化技術群、温度、圧力分布計測技術群に基づき、主に射出成形における2つのブラックボックス―金型と加熱シリンダ―の内部現象および共押出、半導体封止過程の諸現象の解明を系統的に行ってきた。

その内容は次項の「研究内容」に記載されている。またこの間、新しい産学連携システムの開発を模索して、10年間で延べ27社(米国企業1社を含む)、95名の派遣研究員の参加と、総額7億円の研究費を投入した国内最大級のマルチクライアント・プロジェクト(通称Vプロジェクト)を主導して来た。さらに、2000年からは延べ61社、総額3億3千万円、派遣研究員26名の「"超"を極める射出成形」特別研究会(通称Uプロジェクト)を主導してきた。Uプロジェクトは、現在もなお継続中である。